恐竜の化石発見 太古からのメッセージ

更新日:2022年03月31日

首に長い恐竜の骸骨のイラストの右上方に「太古からのメッセージ」と書かれたイラスト

安楽島町で発見された恐竜化石

鳥羽は、古くから自然環境と、豊富な海の幸に恵まれ、「美しくに、御餉(みけ)つ国」として、奈良、平安の都をはじめ近畿一円にその名を広めていました。そして、戦国の世には、九鬼嘉隆の率いる「志摩水軍」とともに、日本全国に知れ渡るようになりました。江戸時代においても、樋の山、安楽島、湾内の島々に囲まれた天然の地形を生かして、「天下の台所」大坂と幕府の中心地江戸を結ぶ海上交通の重要な風待ち港としての役割を果たしていました。 時代は明治に移り、世界に冠たるミキモト真珠の生みの親、御木本幸吉翁の養殖真珠の発明から、氏をはじめとする市民の力で、今日の「観光都市」としての顔を持つようになり、着実に発展してまいりました。 しかしながら、近代の物質文明が発達するのと比例して、過疎化問題も顕在化し、右肩上がりできた観光業も、時代のニーズからか、最近では、その衰退化傾向を認めざるを得なくなってしまいました。

現代の内外の抱える共通の問題を勘案しながら、鳥羽市の現状の問題をどのように解決していくか? 行政は元より、市民のひとり一人が、21世紀へ向けて新しい価値観の中、「地域の活性化・振興」を目指して邁進する必要に迫られております。

こんな折り、鳥羽安楽島海岸で発見された巨大恐竜の化石は、私たちにどんなメッセージを伝えようとしているのか? 世界に類を見ない貴重な「巨大恐竜の化石の発見」という事実は、今後の「鳥羽」のまちづくり=人づくりに大きなキッカケを与えてくれました。

ご承知の通り、神宮が伊勢の地にご鎮座したのが、約2000年前と伝えられています。鳥羽で発見された恐竜化石は、何と1億3千万年余り前の地層から発見されたのです。人類がこの地上に存在する以前にこの鳥羽の地に巨大恐竜が存在していた事実をどのようの扱えばよいのでしょうか?

人類の科学万能主義が、方向転換をしようとしている時代(現代)、尊敬すべき古地球生物(恐竜)に代わって我々人類が、未来永劫に伝えなければならない重要なメッセージ。「何を受け、何を伝えるのか?」模索の中から真実を探求できれば幸いです。

マメンチサウルス

中国四川省合川県で発見され、中国名では「合川馬門渓竜」と呼ばれている。 中生代のジュラ紀後期(約1億5千万年前)に生息していた。アジア最大の草食恐竜(全長22~26m)で、頭は小さいが著しく長い首(10~14m)が特徴。よく知られている大英博物館の監修による、実物の40分の1復元模型では、長い首を上方に高く持ち上げているが、現在では体の前方にゆるいカーブを描いて伸長させていたモデルが想定されている。

鳥羽竜

発見

1996年7月14日、化石研究家である高田雅彦、藤本艶彦、谷本正浩、金子篤の4氏が、鳥羽市安楽島町の海岸で発見された恐竜化石は、その後の三重県大型化石発掘調査団による頭部の歯、首、肩、腰、脚にわたるほぼ1体分の化石の発掘によって、今秋一番の夢のある話題を提供してくれました。

松尾層と研究史

恐竜化石が発見された松尾層(鳥羽市松尾―旧加茂村)は明治中期(1894年)から化石を含んだ地層として知られるようになり、その後、何回か総合的な地質調査が行われて、現在では地元、大王町船越出身の山際延夫氏によって安楽島~石鏡~国崎~相差~的矢~磯部~五知~白木~岩倉を囲む地域の地質図が作成されています。

鳥羽竜とマメンチサウルス

恐竜化石の専門家である、亀井節夫・冨田幸光・東洋一、それに中国の董枝明(ドン・ジミン)4氏によって、発掘段階では現在知られている恐竜の中で、マメンチサウルスに近い仲間として解釈されています。しかし、産出した地層の時代の差異「中国では中生代のジュラ紀後期(約1億5千万年前)--日本では白亜紀初期(約1億3千万年前)」と、地理的な差異「中国では陸部の湖沼域--日本では沿海部」などの理由から、「鳥羽竜」はマメンチサウルスに近いが、独立した別の科を設けて分類する必要があるのでないかと検討されています。

恐竜の名称については、詳細な学名や和名は分類上の位置が決まらないと付けられないので、それまでは(あるいは、それ以後も)"鳥羽竜"と愛称するならわしによっています。

鳥羽竜……そして将来への夢

日本での恐竜化石発見の第1号は1978年の茂師竜(岩手県岩泉町茂師)ですが、実はこれもマメンチサウルスの仲間だと考えられています。それまでは、長い間日本では恐竜化石は出ないものとされてきました。 その後、1道12県から20数例の肉食性や草食性のさまざまな恐竜に関係した化石が続々と発見されましたが、今回の鳥羽竜の発見は西南日本の外帯(広い意味での太平洋沿岸部)から報告された数少ない例で、しかも特大の恐竜が全身の化石として発掘されるという画期的な出来事となった訳です。

今後の鳥羽竜の研究から、中国四川省のマメンチサウルスや岩手県のマメンチサウルスの仲間との比較による恐竜自体の系統分類と、産出した先志摩半島を含む日本列島の地質構造発達史を検討するための、貴重な情報がもたらされることになります。 そして、きっと近い将来、より詳しい続報を運んでくれる、別の恐竜等の化石が紀伊半島の中から発見されるでしょう。

伊勢、鳥羽、志摩の恵まれた自然、豊かな文化に「鳥羽竜」という宝物が加わったことになります。「鳥羽竜」は21世紀に向かう、サンベルトゾーンの次世代に託される、まさにロマンあふれる夢の贈物といえるでしょう。

《鳥羽の地質について参考》

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